2019年10月12日土曜日

【開催報告】9月29日(日)にカレル・チャペック「ロボット」の読書会を開催しました。

以下、読書会当日に参加者同士で話し合った主な内容です。
いつものごとく、抜け漏れ等たくさんあると思いますがご容赦ください。



・仕事とは、労働とは、人格の完成とは、人間とは、
 など色々な問いを突き付けられる作品であり、
 読み手によって色々な考えが生まれそう。
 読書会で話し合うのにとても良い本だった。

・会話劇が苦手で、最初は読みにくさを感じた。

・1幕の最後の展開が急展開過ぎて過ぎて付いていけなかった。
 →ドミンが横暴で、ヘレナは優柔不断というキャラクター性を表すためのシーンと解釈した。
 →ヘレナは自身の魅力を知りぬいていて、周囲の男たちを狙って虜にしていったのかもしれない。

・キリスト教色が濃い作品で、キリスト教の人が読んだ場合の感想が聞きたくなった。
 →ロボットの反乱について、明確な理由が描かれておらず、納得し辛かった。
 →西洋的な価値観では、神に反するロボットが人間の反逆者になるストーリーが多いが、
  日本だと、ドラえもん、エヴァ、ガンダムなどロボットがパートナーとなる作品も多い。

・レンガの感触に喜びを感じるアルクビストの価値観が自分は好きだ。
 登場人物に好き嫌いがあれば教えて欲しい。
 →写真も含めてドミンの生きざまは恰好いい。
 →ヘレナは嫌われそう。空回りしているトラブルメーカーである。
  →確かに嫌われそうだが、一番人間臭さを感じられるキャラクターでもある。
   ヘレナの人間臭さが物語を動かしているとも考えられる。

・ブスマンの最後が面白かった。展開が予想でき、予想通りの展開を迎えたことに笑ってしまった。
 →最後まで自分の生き様を貫き通したブスマンが恰好よく思えた。
 →金の亡者だから、最後まで金の力を妄信していたように見えた。
  →ストライキが発生したときにお金で解決させようとする経営者にそっくりだ。

・ドミンの理想が実現していたら社会はどうなっていただろうか?
 →ロボットが人間より賢くなったり、心を持ったりすると、人間が必ずロボットに支配されるように思える。
 →目的を果たすために使う時間は労働であり、全ての労働をロボットがこなすようになっても、
  結局人はやることがなくなったら新たな労働を生み出すと思う。
  →自分も、仮に明日から仕事がなくても、したいことは山ほどある。
  →自分は逆に、三連休とかをわざわざ作っても、何もせずに終わってしまうことが多々ある。

・再生産はできないものの、ロボットは人間の上位互換の存在として描かれているように感じられたが、
 人間とロボットの違いは何か、他の人の意見を聞いてみたい。
 →ロボットが恐怖(≒情動)と知性と人同様の体を持っていたため、自分はロボットと人間の違いがわからなかった。
 →ドミンの言うような、「生きる喜びを感じていないロボット」同然の人間は、現実社会にも相当数いると思われる。
  →労働を排除して超人になることを目指すのが人間のあるべき姿、というドミンの発言に考えさせられた。
   →労働を排除して、人が成長できるのかは疑問である。
    →現代日本の価値観では、仕事を通して自己実現することが重要なこととされているが、
     20世紀前半の労働者で、仕事にやりがいを感じている人は少なかったはずである。

・結末についてどう思ったか。
 →最終的にロボットが生殖できるようになったのかどうか気になった。
  →アルクビストが非常に興奮していたから、ロボットが生殖を覚えて、
   今後ロボットが人間の代わりに文明や社会を構成していくものものと思った。
   →アルクビストのテンションの上り方には共感できるところがあった。
    →不滅とはなんなのか?愛は不滅なのか?と考えさせられた。
     →神と愛には共通するところがあり、どちらもあると信じる人にとっては確かに存在するものであり、
      信じることで人のあり方が変わってしまうことがある。
      →アルクビストの語る愛について、読書会後の二次会でもゆっくり時間をかけて話し合ってみたい。
  →生殖できないと思う。人もロボットも既に滅亡が決定付けらているように感じられた。
   →キリスト教圏の話からしたらかなりショッキングなストーリーで、
    ロボットは愛を知っても生殖できないという罰を背負っているのではないだろうか。
 →唐突な終わり方に感じた。週刊漫画でいうと、打ち切りで連載終了したような感じ。
  終盤プリウスが登場した後、15ページほどで話が終わっており、急展開である。
  →ところどころ急な展開はあったが、会話劇が面白く、テンポもよいので、グイグイ読ませる力が感じられた。

・ロボットを読んで、作者チャペックからどのようなメッセージを受け取ったか。
 →こういう未来が来ないように気を付けなければならない、という警告を感じた。
  読んでてチャペックの怒りが感じられ、その怒りに共感を覚えた。
 →読んでいて無力感を感じた。
  愚かさを抱えたまま人間がいつか自滅するのは必至であり、いつかそうなる未来を受容しながら生きていくしかないのかもしれない。
 →自己実現が人生の全てではなく、労働(=奉仕)には偉大さも備わっている、ということをチャペックが訴えているように感じられた。
 →ラストは唐突すぎてピンとこなかったが、恐らく愛を訴えていたように思える。
  読んでいてモヤモヤしたため、作者のメッセージを考えるのは難しい。
  →愛、労働、人とロボットの違いなど、色々なことを考えさせられて自分もモヤモヤした。
   モヤモヤさせることによって、人間が人間についてちゃんと考え、
   自分たちの力で崩壊を回避するよう、チャペックは仕向けたかったのではないか。